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人間の腸内には、約1000種類の、そして総数100兆を超える細菌が存在します。その大量の細菌たちが、腸で作り出している生態系を「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」や「腸内フローラ」と呼び、そこで生成されるいくつかの種類のアミノ酸が人間の健康と深い関わりがあることが分かってきています。 腸内フローラの中に生息する微生物のうち、人間の体の健康に役立つ微生物の総称を『プロバイオティクス』といいますが、その研究分野で世界のトップランナーたちと競争している研究者が江崎グリコには、います。基礎研究室の青木 亮さんです。

青木さんは、大学在学中から腸内細菌の研究を始め、江崎グリコ基礎研究室(当時のグリコ乳業の研究部門)に就職。その後、約15年以上にわたって、プロバイオティクスの研究に携わっています。 青木さんの研究成果は、各種学会・学術誌に論文投稿され、シンポジウム等でも講演を行うなど、多くの評価と注目を集めています。プロバイオティクス関連の研究プロジェクトにおいては、当社社内の研究開発はもとより、大学や理科研究所のような研究機関との共同研究も行われ、取材当時も青木さんが主導している慶応大学の研究室に出向されていました。お忙しい中、少し時間をいただき、これまでのキャリアを振り返りながら、お話を聞かせていただきました。

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15年前、2005年の春に江崎グリコに就職された青木さん。「大学からの研究を続けたいというだけなら大学に残ればよかったんですが、社会に出て、これまでの研究を社会の役に立てたいと思いました。かっこ良く言えば、研究で得た技術を社会実装したいと思いまして」と語られます。当時の青木さんが就職した際には、採用面接で「就職したら、腸の研究を続けていい」と言われ、入社後、配属で営業職にされたりすることはないという安心感も手伝って江崎グリコを選んだということです。入社した後、1〜2年は大学での研究の続きをやっていました。その後、ヨーグルト商品のライナップが絞られてきて『ビフィズス菌BifiX®(ビフィックス)入り』ビフィックスヨーグルトに、全社的に力を入れ始めた時期に開発チームに参加します。ビフィックスヨーグルトのキャッチフレーズ『(ビフィズス菌が)生きて腸まで届いておなかで増える』も、裏付けとなる研究成果から考案されたものでした。

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ビフィズス菌BifiX®がプロバイオティクスとして有望そうだということが分かってきて、研究の結果、BifiX®は、お腹に100個届いたら1000個に増えることが確認できたそうです。微生物の研究現場の実際は、かなり膨大な情報を処理する作業だそうで「例えばビフィックスの場合でいうと、当社の研究所には、世界中から集められた約1万種の腸内細菌が保有されています。この1万種から最も有望な1個を見つけ出すために、9999回の失敗を重ねたということです。微生物の研究というのは、失敗の山を築いていく作業ですからね」と青木さん。

「研究所というと、試験官とピペットを使ったラボワークのようなものを想像されると思うのですが、このような所謂ビッグデータを扱うようになった研究の現場では、コンピューターを使ったデータ解析・検証に、研究の重要度の比率が移り変わってきています。もちろん、ラボワークもあるのですが、コンピューターを使って出てきたデータをどう処理するか?の方が重要になってきています。腸内細菌が1000種類、人間ひとりのDNAデータがテキストデータで約10ギガバイト、且つ、個人差が非常に大きい。そのようなデータを解析する場合、エクセルで比較して、みたいな方法でやっていると全然終わらないんで、プログラムを作ってデータ解析をするわけですが、これが結構タフワークです笑」と、にこやかに話される青木さんですが、食品分野の研究所では、基礎研究の知識もありながらデータ解析も出来るというスキル範囲の広い人材というのは、ほとんどいません。

データ解析の技術と基礎研究の技術の両方のスキルをご自身に課されていることについて、こう語られます。「やはり研究は最先端を行かなくちゃいけませんし。IT技術は現在アメリカがとても強いのですが、だからといって当社がプロバイオティクスの分野で遅れをとっていいという訳はありません。確かに僕が研究を始めた頃には、なかったやり方だし、当然、コンピューターの扱いやコードの書き方なども身につけていたわけではありませんが、それでも、世界との競争力を保つためだったら、ハードルは高くても新しい技術は積極的に挑戦していきたいですね」生物の好きな研究者には、数学があまり好きではない人が多いと笑いながらも、今後は若い人達の追従を期待していますと話されました。

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2010年代に入り、ビフィズス菌BifiX®の新しい効能を証明する東京大学との共同研究が青木さん主導で始まります。「これは珍しいほど上手くいった研究ですね」と言われるくらい狙い通りに研究が進んだそうです。「毎日一定量のビフィックスヨーグルトを食べることで、内臓脂肪が有意に減少することが分かりました」メタボリックシンドロームは長年、世界中に横たわっている社会問題です。もしかしたらメタボをビフィックスが解決する、第一歩になるかもしれません。(※こちらのページで研究について詳しく知ることができます)

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「学生の皆さんへ」

組織においてのキャリアプランって、正直、そんなに自分の思い通りにはいかないのが普通だと思います。でも、そんな中において、江崎グリコは、自分の意思でキャリアを選択しやすい会社かもしれない。成果を出すために必要なことであれば、新しく勉強したい事を申請すれば結構なんでも認めてくれて、環境を整えてくれます。社内公募システムというのもあって、携わりたいプロジェクトへの参加や各部署への異動を自ら手を上げて、立候補する制度もあります。それと研究職への就職:特にプロバイオティクス分野について言えば、腸内細菌はまだまだ分かってない事が多く、例えば、自己免疫疾患も現代人の食事が多様性を失った事により、腸内の細菌の種類が少なくなっているからなのではないか?と疑われたりしていますし、社会課題の解決につながることができると思います。

どんな人が向いているかと言われると、今の時代は技術の進歩の速度が半端じゃなく早いので、勉強するのが苦にならない人と答えます。英語が出来て、技術を持ってて、あれが出来て、これが出来てと求めはじめるとキリがないし、完璧な人間はいないので。新しい事を勉強するのが好きな人だったら、色んなことに対応していけるんじゃないかなと思います。やっぱり社会の動きは目紛しいし、環境の変化に対応できるっていうのが、一番の適性なんだと思います。